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長期入院の子どもにも授業や自然体験を

Improve Children's Future

· 2017年度 助成・支援事業紹介

健康な子どもと同じ体験を届けたい

病院に長期入院している子どもたちは、学校で友達と学んだり、自然の中で遊ぶといった小児期に必要な体験をする機会が失われています。鹿児島大学医学部で学生生活を送っていた山本道雄さんは実習で訪れた小児病棟で、小学校入学直前に小児がんと判明して長期入院をしている子どもに出会いました。心身の成長に大切な時期に、時間をもて余してベッドの上でゲームばかりしている様子に愕然とします。「入院中でも子どもたちには将来に役立つさまざまな経験をしてほしい」との思いから、2016年9月に鹿児島大学の医学部の学生を中心にボランティア団体Improve Children's Future(以下、ICF)を設立しました。

「健康な子どもと同じ体験ができる環境を創る」ことを目的に、地域の小学校の教室と院内学級を繋いでクラスメイトと同じ授業を受けられるようにしたり、自然学習や社会科見学の疑似体験ができる映像システムの構築に取り組んでいます。

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360度の大スクリーンで自然の映像を体験します。森の中で蝉の抜け殻を見つけた!

病室と教室をつなぐ遠隔授業

2016年11月に、鹿児島市立病院院内学級と鹿児島市立中洲小学校の教室をテレビ会議システムでつなぐ映像授業を初めて実現しました。授業の中で、教室の子どもたちから入院中の子どもに「語り合おう」という歌がプレゼントされました。病気と闘う友達に向けて「見つめ合おう、語り合おう、君と共に生きていこうよ」と一所懸命に歌う子どもたち。病室と教室の子どもたちの心が通い合う授業になりました。その後も授業を重ねるごとに、授業以外の時間も学校のことを話題にしたり、勉強に意欲をみせるなど、入院生活自体が変化し、退院後も抵抗なく学校生活に溶けこむことができたといいます。

この経験をもとに、2017年4月からは鹿児島大学病院と鹿児島市立病院で同様の試みを月1回のペースで行い、25名がそれぞれ地元の学校の授業に参加しました。授業後には、日々の生活が前向きになったり、復学への思いをつよくした子どもも多くみられました。ICFでは、この取り組みを全国の病院に広げられるようにと、詳細なマニュアルを電子データで作成し、希望があれば無償で提供することにしています。

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授業にリアルタイムで参加。檀上の先生と授業を受ける子どもたちを

病院のスクリーンに大きく映すことで臨場感が生まれます

病院にいながらにして、自然を体験

子ども時代に、海や川、森などの自然の中で多くの体験をすることは心身の成長に大きな影響を与えます。病院に長期入院をしていると、その大切な機会が奪われてしまいます。そこでICFは、「少しでも外の世界を体感してほしい」と、病院内でも自然が疑似体験できるリアルな映像を作成しました。

 

2017年10月、鹿児島大学病院小児科病棟内にリアルな自然体験ができるドーム型のスクリーンが完成しました。自分のまわりを360度映像が取り囲む本格的なシステムです。入院中の子どもたち25名が保護者と一緒に参加して、病院内にいながら臨場感のある自然を楽しみました。

 

「森の中を散策して昆虫を見つける」「海辺を歩いて貝殻を拾ったり、泳いでいる魚を観察する」「ドローンで空から桜島を見る」といった自然体験をスタッフが高性能カメラで撮影。子どもと同じ目線の高さで撮影したり、仲間たちと並んで森に入っていく雰囲気を演出するなど、シーン作りにもこだわりました。

 

子どもたちは映像の世界に入り込み、夢中になります。ドームの中を歩き回ったり、映像のヒトデに触ろうと手を伸ばしたり、それぞれのやり方で自然体験を楽しみ、「虫取りにいきたい」「元気になって遊びにいきたい」と、病気に打ち克つ前向きな気持ちも生まれました。

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秘密基地のようなドーム型スクリーンに入って、映像を楽しみます

医療と教育現場をつなぐ架け橋に

山本さんは今回の取り組みで、病院、学校、教育委員会の間にさまざまな規則や条件が混在する中での許可取りの大変さや医療と教育の間の壁の厚さを痛感したといいます。「長期入院をする子どもの教育や心のケアについては、まだまだ考えられていない部分も多いと感じました。子どもたちのために、医療と教育現場をつなぐ架け橋になるための仕組み作りをしていけたら」。

ICFは長期入院の子どもたちの幸せを願い、健康な子どもと同じ体験を届けるための環境作りをこれからも目指していきます。

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大きなスクリーンに映っているのは、海底にいたヒトデ。
子どもたちはタコやヒトデの映像に夢中!

・Improve Children's Future
 団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)

 

・2017年度 日本財団支援事業

 病院で入院している子どもが健康な子どもと同じ体験をできるシステム作り

○入院中の子どもとクラスメイトを繋ぐ映像授業のマニュアル作成

病院の院内学級の子ども(約15名)と小学校のクラスメイトの子ども(約25名)をつないだ映像による授業を実施し、電子データによるマニュアルを作成

○入院患児に向けた映像体験のための備品整備

患児からリクエストのあった風景をボランティアスタッフが撮影。鹿児島大学病院にて、ドーム型スクリーンを用いた自然体験を入院患児(25名)に実施。

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