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地域で支える小児緩和ケアで、「その子の時間」を取り戻す

一般社団法人こどものホスピスプロジェクト

· 2017年度 助成・支援事業紹介

当たり前の体験ができる喜びの場を

「かき氷が食べたい!」男の子の声が響きます。かき氷を作って、妹と弟と食べながら、満面の笑み。こんな何気ない日常的な風景ですが、その子と家族にとっては特別な時間です。これは、大阪市の鶴見緑地内にあるTSURUMIこどもホスピス(以下、TCH)の風景です。「ポケモンマスターになりたい!」と言っていたこの男の子が小児がんの闘病をへて、亡くなったのはそれから1か月後の7歳の夏。きょうだいと一緒のこのかき氷の時間がTCHに来てくれた最後の日でした。

ホスピスというと終末期をイメージする方が多いかもしれませんが、TCHの活動はそれとは異なり、子どもが闘病により得難くなってしまった体験を、さまざまなかたちで提供すること。「その男の子は、入院中には会うことができないきょうだいに、いろんなことを教えてひっぱっていく中で、自分を見出していたのかもしれません」とTCHゼネラルマネージャーの水谷綾さんは話します。

生命を脅かされる病気と共に生きる子どもたちは全国に2万人いるといわれています。厳しい状況の中、入院や在宅治療をするそうした子どもたちにとっては、友だちとの遊びや登校、ピクニック、プール遊びといった当たり前の体験が手の届かない夢のようなことに変わってしまいます。TCHは、そうした子どもたちに遊びと体験を提供していこうと、個々の状況や課題、希望にあわせたパーソナルケアを行う日本初のコミュニティ型こどもホスピスとして2016年の春に開設されました。民間の寄付で成り立っており、利用者は無料で参加することができます。

秋祭りの会場で、ボランティアとゴム鉄砲で的あてをする女の子

その子の思いを引き出すパーソナルケア

パーソナルケアの主な内容は「デイユース」、「集団プログラム」「宿泊(ステイ)」、「訪問」に分かれています。

「デイユース」は、子どもの体調と相談しながら、子どものやりたいことを大切にして家族との時間を過ごします。きょうだいや友だちと遊んだり、音や映像を楽しんだり、クッキング、ブランコや卓球、ダーツをしたり。小児がんの2歳の男の子は、生まれて初めてのプール遊びを体験。最後に水が顔にかかって泣いてしまいました。「治療以外で泣いたことがそれまでになかったため、感無量でした。普通のことができることが本当に重要なことなのです」と話してくれたお母さん。こうした日常の幸せな時間が、厳しい状況でも先に進む勇気をくれるのです。

「集団プログラム」は、同世代、同じニーズの子どもと集団で取り組むプログラム。さまざまな設定をメンバーとともに考えて、自然の遊び、キャンプ、お絵かき、クラフト、アロマ、おとなカフェなど、季節感のあるわくわくするような活動を開催します。ここでは親同士の交流、分かち合いの場も生まれます。
 

病状が重い子どもも家族一緒に自宅や病院以外でのお泊りができるよう「宿泊(ステイ)」を2017年度から開始。この経験で自信が持てて、これからの時間を大切の生きるための一歩や、かけがえのない思い出になるといいます。「訪問」は、病状が変化しTCHへの来館が困難になった場合に、子どもの入院先の病院や自宅にスタッフが訪問し、本人の好きな遊びややりたいことを一緒にしたり、きょうだいと話をするなどの活動を行います。

同じ状況の子どもをもつ家族の集団プログラムのピクニック。
「ご飯どうしてる?」「お肉の焼き加減がね」と、親同士の会話がはずみます

地域の理解者を増やし、医療と連携を

TCHでは、子どもを亡くしたご遺族が来館してお子さんの写真を見ながら思い出を語り合ったり、TCHのチャリティ活動に参加しともにホスピスをつくっていく。そんな緩やかなつながりを持っています。TCHを支える活動に参加するご遺族も増えており、「大切な思い出と記憶がある場所」「心の拠りどころ」となっています。

「これまでの3年間、子どもとご家族に寄り添いながら、子どもの辛さやしんどさ、子どもに必要なことに思いを巡らせ試行錯誤する中で、活動の軸が少しずつ固まってきました」と水谷さん。

子どもの病気や死は社会からは見えづらく、生命を脅かされながら生きる子どもとその家族は、周囲に理解されることが難しいため精神的、肉体的、経済的な負担が大きく、社会的に孤立しがちです。「われわれの取り組みは今後さらに必要になるのかもしれません。そのため地域での理解者を増やしていくのが大事な仕事だと考えています。子どもが最期までその子らしく暮らせる地域社会になるために、家族の方々と一緒に歩んでいけたらと思います」。

さらに、水谷さんは、医療とどう手を携えてその子のケアを考えられるかということが特に大事だと感じています。「子どものその時々の発意を大事にしながら、その子の人生や思いをどれだけ汲み取れるか、ご家族の思いとともにその子らしい時間(最期のとき)をどうするのか。そういった点からも医療者の理解を深め、しっかりコミュニケーションをとれる自分でもありたいし、現場のスタッフにもそうあってほしいと思っています」。

これからもTCHは子どもの「今を生きる」「成長と発達」を大切にしながら、医療との連携を強化し、地域で支える小児緩和ケアの在り方を追求していきます。

木の温もりある建物、緑が美しい庭で、家族はほっとできる時間を過ごします

・一般社団法人こどもホスピスプロジェクト
 団体情報はこちら(CANPAN 団体DBへ)

・ 2017年度 日本財団支援事業
 TSURUMIこどもホスピスの運営及びプログラムの企画・運営
○難病を抱える子どもへのケアプログラム
パーソナルケアプログラム143回、集団プログラム34回、遺族支援プログラム10回
○地域向け啓発イベント
地域向けイベント(TSURUMIカフェ開放イベントを含む)75回

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